サテュロスの祭典

少女ヌード写真の愛好家です。規制法が緩和され、少女ヌード写真美術復興と新作発表を目指し、果たされた暁には、設定年齢と同年齢の子役起用しての完全ノーカット無修正の実写化目指した小説を執筆します。茶化し冷やかし大歓迎、鋭いツッコミはお手柔らかにお願いします。#少女愛 #少女ヌード #西村理香 #力武靖 #清岡純子

紅兎〜想望編〜溜息(3)

また、食材が激減している。
『また、あの子達ね!』
一瞬、眉に皺寄せ口をヘの字にした由香里は、しかしすぐに笑顔になった。
犯人は決まっている。
今頃、由香里の裏をかいてくすねた食材で、どんなお菓子を作ろうか、政樹と茜は話に花を咲かせてる事だろう。
そうして、作るお菓子が決まったら、茜は目を三日月にして笑顔を浮かべ、上半身裸になって唇を求める。
政樹も満面の笑顔で唇を重ね、小ぶりで可愛い乳房を愛し気に揉みながら、ゆっくりと茜の帯を解き、既に脱ぎかけた着物を完全に剥いでゆく。
こうして、二人の甘く暖かな、長い冬の夜が始まってゆく。
姿を消したのは、南瓜に芋に人参…
小豆に餅米はわかるのだが…
長葱に白菜まで持ち出して、何を作ろうと言うのだろう…
『しょうのない子供達…』
由香里は、今頃、明日作るお菓子に胸をときめかせながら、全裸で絡み合う政樹と茜に思いを馳せて、クスクスと笑い出した。
二人の前では、顔を真っ赤に怒って見せるが、実のところ、二人がどんなお菓子を作るのか、一番楽しみにしてるのは、由香里なのかも知れない。
市場で買い出しに出かける時も、これから作る料理の他に、二人が作るお菓子の事も、気持ちの何処かで考えながら食材選びをしている。
こうして、激減してしまい、最初に考えていた料理を断念しながら、残された食材で何を作るか考えるのも楽しみなのだ。
「ねえ、里一さん、明日は何を作ろうかしら…」
由香里は満面の笑みで振り向くや、思わず溜息を漏らした。
残された食材で、献立を編み出すのが得意な彼が、そこにいない。
忽ち、権と兎達が帰ってきた日の事を思い出して、涙が溢れて来る。
『私ったら、何て馬鹿な事をしてしまったのだろう。』
由香里の胸に後悔の念が込み上げ、涙が溢れてくる。
里一に嫌われてしまった…
浅はかな事をしたばかりに…
産まれて初めて胸を熱くした男なのに…
振り向けば、いつもそこにあった盲目の笑顔は、二度とやって来ない。
残された食材を前に、次々と素敵な献立を読み上げてくれる事も二度とない。
『里一さん…ごめんなさい…ごめんなさい…』
由香里は、両手で目を覆うと、一人声を押し殺してシクシク泣き出してしまった。
心地よい…
亜美は、秀行に抱かれながら思った。
何て暖かく…
何て安らかなのだろうと思った。
強靭巨躯な秀行は、怪力無双なのとは裏腹に、床の中では繊細で優しかった。
乳房を揉み、乳首を吸う時も…
全身に唇を這わせ、撫で回す時も…
まるで壊れ物を扱うようであった。
特に…
暫し、唇を重ね、舌を絡ませあった後…
「アンッ…アンッ…アーン…」
亜美は、秀行が首筋に唇を這わせながら指先で股間を弄り出すと、甘えるような声をあげた。
秀行は、種付け参拝に訪れる、荒くれ達のように、乱暴に指を挿れて掻き回すような真似はしない。
雛鳥の頭を撫でるように、優しく参道の神門を撫で回し、先端の神核を指先に転がす。
たまに、それがくすぐったくて、笑いそうになる時もある。
また…
「ねえ…剥いても良いのよ。直接、触られても平気だから…」
亜美が幾ら言っても、秀行は神核に触れる時、未だに剥く事をしない。
包皮越しに、そっと指先に触れて来るのだ。
十一歳で引き取られたその日から、田打でいきなり乱暴に包皮捲られ、直に神核を抓りあげられてきた亜美には、少々物足りなく思えなくもない。
しかし…
「アァァーッ…」
秀行が、胸元まで辿り着いた唇に乳首を含ませ、これまた優しく丹念に舐め回しながら、更に包皮越しに神核を転がすと、亜美は一段と声をあげた。
一瞬、手足の指をピンと突っ張らせながら、次第に全身の力が抜けてゆく。
心地よい…
何て心地よいのだろう…
脳を直にくすぐられながら、全身羽毛に包まれ、宙に浮かび上がるような感覚にとらわれる。
同時に…
『ふふふ…ヒデ兄ちゃんったら、相変わらずね…』
秀行の背中に腕を回して触れてみると、案の定、震えている。
秀行に始めて抱かれた十四の時。
以来、四年も肌を重ねているのに、大きな身体して力持ちの彼が、自分の半分もないか細い身体に、未だおっかなびっくり触れてくる。
亜美は、そんな秀行の事を、可愛いなと思う。
そうして…
参道が充分に潤ったのを見計らうと、秀行はもう一度唇を重ねながら、怒張した穂柱を押し当てた。
その時も、決して荒々しく入れる事はせず滑らかに入れ、しなやかに腰を動かしてゆく。
「アンッ…アンッ…アンッ…アンッ…」
亜美も、秀行の動きに合わせて、腰を跳ね上げる。
やがて…
「アーーーーーーーーンッ!!!!」
大きく腰を浮かせて、高らかな声を上げる亜美の中で、秀行は絶頂を迎えた。
暖かな刈穂がとめどなく注ぎ込まれ、下腹部から全身に言葉に尽くせぬ温もりが広がり、頭の中が真っ白になる。
何と心地よく…
何と安らかなのだろう…
暖かい…
暖かい…
身も心も蕩けそうになる。
至福の瞬間…
永遠に続けば良いのに…
しかし…
秀行は、刈穂を放ち尽くすと、亜美の乳房を弄りながら、ジッとその顔を見つめた。
「どうしたの?もっとしたい?しても良いよ。」
亜美は、乳房を撫で回してくる大きな手を抱き締めながら、ニッコリ笑って言った。
男達の中では、秀行しか見る事のできない優しい笑顔である。
「元気…ないな?」
秀行は、彼をよく知る者にしか感情の読み取れない眼差しを向けながら、喉から絞り出すような声で言った。
「ユカ姉の事…気になるか?」
亜美は答える代わりに溜息をついた。
そう…
コトを終えた途端、急に由香里の気落ちした顔を思い出したのである。
亜美は、秀行と至福の時を過ごす程に、同じ至福を由香里にも味あわせたいなとよく思う。
十一の時から、かつての神職者達や顔役達、種付参拝達に弄れ続けた由香里は、未だ本当に愛する人に抱かれた経験がない。愛する男に抱かれるとは、どう言う事なのか、見当もついてないだろう。
そもそも…
歳下の兎神子達を庇う事に必死で、男を愛するゆとりなどなかったのだ。
その由香里が、初めて人を愛した。
何とか、結ばせてやりたいと思い続けて、遂にその機会が訪れた。
それが…
「男と女を…くっつけよう…何て…君にしては…珍しい事を…したな。」
秀行が言うと、亜美はまた、大きな溜息をついた。
自分では、練りにねった計画だと思っていたのだ。
『全く!マサ兄ちゃんも、茜姉ちゃんも、何考えてるのかしら!あんな風にされたら、くっつくものもくっつけないわ!』
いつだったか、例によって、里一と由香里を囃子立てる政樹と茜を見て、菜穂は怒り心頭になっていた。
『里一さんも、ユカ姉ちゃんも繊細なのよ!マサ兄ちゃんや茜姉ちゃんとは違うんだって、何でわからないのかしら!』
『でも、今のまんまじゃ、あの二人、千年経っても何も起きないのも確かよ。ねー、リュウくん。』
『だねー。』
側では、雪絵と竜也が鞠付きをしながら、ぼやくように言って溜息をついていた。
すると…
たまさか、そこに居合わせていた亜美は、菜穂にそっと手招きしてみせた。
『なーに、亜美姉ちゃん…』
小首を傾げて側による菜穂に…
『ねえ、里一さんとユカ姉ちゃんの事だけど…』
『うん。』
『良い方法、思いついたんだけど…協力してくれない?』
そっと、耳打ちして言った。
「その方法が…風呂場で二人きりにか…君も…いざとなると …やる事が大胆だな…」
亜美は、また大きく溜息をつくと、押し黙ってしまった。
うまく行くと思ったのだ。
二人はどちらも、男女の関係になりたがっている。
見てれば、政樹と茜でなくてもすぐにわかる。
ああ言う二人ほど、大胆なきっかけさえできれば、行動も大胆になるのだ。
二人きりで、裸にして仕舞えば、後はもう速攻で抱き合うだろう…
亜美はそう確信して疑わなかった。
菜穂も同意見だった。
政樹と茜のように、外野でわいわい騒げば萎縮してなかなか行動に移せない。
しかし、二人きりで、そう言う状況になれば、驚く程、すんなりなるべきようになるだろう。
十一の時…
羞恥心が強く、隠砦で初めて男の子達の前で裸にされてしまった時、泣いていてばかりいた菜穂もそうだった。
初めて此処に来て、初めて顔を見た瞬間から、恋い焦がれていた和幸と、二人きりになった時、当人も驚く程あっさり身体を開いてしまったのだ。
里一と由香里もきっと…
そして、思いもかけず、その機会が訪れた。
権を探しに出かけた里一が、何処で何をしていたのか、泥まみれになって帰ってきたのだ。
しかも、兎神子達は皆、権と兎達に夢中に気を取られ、里一と由香里を冷やかすどころではない。
二人を隠砦に閉じ込めるのは今だ…
「だが…上手くゆかず…落ち込んでるわけか…」
亜美は、潤んだ眼差しを秀行に向け、唇を噛み締めた。
「どうした…?」
秀行が、今にも涙を溢れ出しそうな亜美の頬を撫でながら言うと…
「愛ちゃんの床上げのお祝いした次の日なんだけどね…」
亜美は漸く重い口を開き始めた。
「愛ちゃん、何かの話の流れで自分が着ていた花嫁衣装をユカ姉ちゃんに着せたの。どうしてだったかな…」
「ユカ姉に…花嫁衣装…」
秀行は呟きながら、微かに口元を動かした。
「あ、笑ったでしょう。」
亜美が思わず眉を寄せて口を尖らせると…
「いいや…」
と、言いつつ、また秀行は口元を微かに動かした。
「やっぱり笑ってる!」
亜美は、益々口を尖らせると、秀行の頬を軽く抓って見せた。
すると、秀行の眼差しが微かに優しげになり、今にも泣き出しそうだった亜美も、忽ち破顔して、吸い込まれるように唇を重ねた。
最も…
これも、亜美だからわかる事であって、他人が見れば、口元を動かした時も、眼差しが優しげになった時も、秀行は無表情にしか見えないのだが…
一頻り唇を重ね合わせ、肩を抱き合うと…
「花嫁衣装を着るユカ姉ちゃんを見て、愛ちゃんとサナちゃんが言ったんだ。とっても綺麗、素敵だってね。」
亜美は、重ねた唇を離すと、秀行の顔を上から見つめて言った。
「それから、いろんな話になってね。最後に、サナちゃんが言ったの。本物の祝言が見たいってね。そうしたら、愛ちゃんも、ユカ姉ちゃんの祝言が見たいって言ったのよ。」
「だから…見せてやりたいのか?」
秀行が言うと、亜美は一度は収まりかけた涙を、ハラハラと溢れさせた。
「だって、あの子達…もうすぐ…」
亜美は言いかけると…
「アッ…アンッアンッアンッ…」.
不意にまた、小さな喘ぎ声を漏らした。
秀行が、下から亜美の乳房を弄り、乳首を吸い出したからである。
「男と女は…誰かが…引っ付けようとして…引っ付く…ものでも…あるまい…」
秀行は言いながら、乳房を弄る片方の手を亜美の参道に回し、今度は神核を優しく愛撫し始めた。まだ、秀行の放ったものでヌルヌルと濡れているそこは、更なる湿り気を帯び始めた。
「アッ…アッ…アッ…アッ…」
喘ぐ亜美の鼓動が次第に早く脈打ちだす。
「男と女とは…ごく自然に…結ばれるもの…だろう…僕と…君のように…」
「ヒデ兄ちゃん…」
「心配….するな…あの子達は…何処へも行かん…ずっと…君の…側にいる。」
秀行が言うと、亜美は満面の笑みを浮かべてまた唇を重ね、二人はそのまま再び重なりあった。
「えっへん!どーじゃ、凄いじゃろー!」
朱理は、今宵も着せ替え人形替わりに、希美を着付け終えると、鼻の下を指先で擦りながら、得意満面に言った。
「えっへん!どーじゃ、ちゅごいじゃろー。」
希美も、縦鏡に映る自分の姿を前に、朱理を真似て鼻の下を指先で擦りながら、ご機嫌であった。
今回の着物の見せ所は、狐の毛皮である。
と、言って、本物の毛皮を使ったのではない。何処からどう見ても狐の毛皮に見えるような色に染め上げた生地で仕立てたのである。
帯も同様で、後ろの結び目は狐の尻尾に見え、正面にには、権が土産に持ち込んだ、松ぼっくりで作った帯飾りが吊るされていた。
希美の頭には、赤い狐の面が横向きに被されている。
昔、同じような着物を、兎で仕立ててあげ、早苗にとても喜ばれた事があるのだが…
「かーいー、かーいー。」
希美にも結果は上々で、大はしゃぎであった。
殊に…
「コンコン、みやげ、みやげ、かーいー、かーいー。」
松ぼっくりの帯飾りを、一番お気に召しているようだ。
「うんうん、凄く可愛いでごじゃるよー。」
喜ぶ希美を見て、嬉しそうに何度も頷く朱理の帯にも、色違いお揃いの紐で同じ飾りが吊るされている。
作ったのは秀行であった。
兼ねてより、秀行は、和幸と菜穂と朱理と、三人色違いお揃いの飾り物をよく作ってあげていた。
色もそれぞれ決まっていて、和幸が青、菜穂が赤、朱理が朱である。
そして、今回、権は籠いっぱいの松ぼっくりを拾ってきたので、希美をはじめ、社の住人全員分の帯飾りも作っていた。
因みに、希美の色は桃色であった。
「お姉ちゃんも、かーいーねー。」
「そうでごじゃるか?」
「うん。かーいー。」
希美が言うと、朱理はニマーッと笑って見せた。
と…
「ナッちゃん、どうしたでごじゃるか?」
朱理は、不意に、側でぼんやり天井を眺めている菜穂に目を留め首を傾げた。
「どちたで、ごじゃるか?」
希美も、朱理の真似して首を傾げた。
いつもの菜穂であれば、一緒に縦鏡の前に立ち、お揃いの帯飾りを眺めて喜んでいる筈であった。
それが、今宵はどうしたわけか、心ここにあらず、溜息ばかりついているのである。
「里一さん、ユカ姉ちゃんの事、どう思ってるんだろう…」
菜穂は、天井を見上げながら、呟くように言った。
「勿論、惚れてるでごじゃろう。」
「惚れてる、ごじゃろう。」
朱理と希美が、口を揃えて言うと、菜穂は大きくかぶりを振り…
「ううん!だったら何で!何で、ユカ姉ちゃんと!
明日は、とことん問い詰めてやるんだわ!」
突然、声をあげたかと思うと、拳を握りしめて立ち上がった。
厨房を逃げるように飛び出した里一は、宮司屋敷の門前に立ち尽くし、大きな溜息を一つついた。
早朝…
厨房には、始終気まづい空気が漂っていた。
由香里はがっくり肩を落とし、溜息ばかり吐いていた。
側で政樹と茜がお菓子の材料を物色しようと、竜也と雪絵がつまみ食いしようと、まるで気づかぬ風であった。
理由はわかっている。
わかっているだけに、声をかけるに掛けられず、里一も無言で惣菜作りと汁物作りに取り組み続けていた。
そこへ、菜穂と亜美がやって来ると、二人の視線が思い切り刺してくる。
幸い、朝食が終わると同時に、亜美には種付参拝が訪れたのでその場を去って行ったが…
今にも泣きそうな由香里と、鬼の形相の菜穂の視線に、針の筵であった。
里一は、いつまで考え込んでも仕方ないと思い、足元に置かれた物に手を伸ばして、また溜息をついた。
「おーい!また、あっしに掃除押し付けて、酷いでござんす!」
「まあまあまあ…」
「ポニョポニョポニョ…」
「あっしは、めくら何でござんすよ!」
「それは大変ねー。」
「辛い辛いポニョ~。」
「少しはいたわっておくんなせぇ!」
「わかったわ!それじゃー。」
「いくポニョ~。」
里一の伸ばした手元には、雪絵と茜が『せーの!』と割って見せた薄板と、二人に押しつけられた箒と塵取りが置かれていた。
リュウ君、今日も新しい鞠付きの練習よ!」
「マサ兄ちゃん、ユカ姉ちゃんが買い出しに行く隙に、お菓子作るポニョ!」
二人が、銘々、子分…ではなく、恋人を引き連れ、遊び始める声が、遠からぬ場所から聞こえて来る。
すると、不意に背中から刺すような視線の気配を感じた。
「そこにいなさるのは、菜穂さんでござんすね。」
「菜穂さんでござんすじゃないわ!」
そっぽ向いて言う菜穂は、頗る不機嫌であった。
「どうしたでござんすか?今朝も呑んだくれ和幸さんに、バケツの水を掛けまくって、まだ怒りがおさまりやせんか?」
里一が苦笑いして言うと…
「私、里一さんに怒ってるの。」
「えっ?あっしに?」
「ユカ姉ちゃん、一人で市場に行かせる気?」
菜穂が眉を顰めて言うと…
「仕方ござんせん。これですから…」
里一は、手に持つ箒と塵取りを差し出して言った。
「もう!里一さんって、どうしてそうなの!」
菜穂は遂に業を煮やしたように声を上げた。
「そんなんだから、せっかく隠砦で二人きりにさせてあげたのに、何にもできないのよ!」
「やっぱり、そっちでござんしたか…」
里一は、頭を掻きながら、困ったような苦笑いを浮かべた。
「私と亜美姉ちゃん、バケツと薪木を片手に、マサ兄ちゃんと茜姉ちゃんが覗かないようずっと見張っててあげたのよ!なのに、お風呂で身体洗いあっただけで、なーんもしなかったって言うじゃない!」
そう…
菜穂の不機嫌な理由は、此処にあったのだ。
権と兎達を連れ帰った日、菜穂と亜美は気を利かせて隠砦の湯を沸かし、里一と由香里を二人きりにした。
覗きが大好きな政樹と茜を、始終見張ってもいた。
今度こそ、二人を男女の仲にしてやろうと言う思いからである。
しかし、結局何も起こらなかった。
由香里は、その気十分であった。
ところが、里一は身体を洗われている間中、固まっていた。
由香里の背中を流し始めると、手の震えが止まらなくなった。
業を煮やした由香里は、遂に自分から行動を起こし、里一の手を乳房に運んだ。
すると、里一は、顔を耳朶まで真っ赤にし、慌てて手を引っ込めて逃げ出してしまったのである。
「全く!その話聞いた時、私、里一さんが本当に男なのか疑っちゃったわよ!それで、ユカ姉ちゃんに聞いちゃったわ!里一さんに、ちゃんと穂柱と穂袋ついているのってね!」
菜穂が怒り心頭に言い放つと、里一は思わず咽せ込んだ。
「おいおいっ!そんな事、由香里さんに聞いたんでござんすか?本当に?」
「聞いたわよ!そーしたら、ちゃーんと、立派な穂柱と穂袋が付いていたって答えたわ!」
「勘弁しておくんなせぇよ…」
里一は、弱り果てたように身を縮こまらせた。
「とにかくね、里一さんは男何だかんだら、もっとしっかりなさい!
全く…そんなんじゃ、安心してユカ姉ちゃんを任せらんないじゃない!」
菜穂は、ますます弁舌爽やかに、人差し指を振りながら捲くし立て続けた。
「まずは、仕事押し付けるお兄ちゃんやお姉ちゃん達に、はっきり断る事!
里一さん、いつかは、ユカ姉ちゃんをお嫁さんにしたいんでしょ!」
「いや、その…お嫁さんとかは…」
「何?したくないの?ユカ姉ちゃんの事、好きじゃないの?嫌いなの?」
「いや、嫌いじゃあ…」
「もう!どっちなの?好きなの?嫌いなの?お嫁さんにしたいの?したくないの?どっちなの?」
「いや、その…なんと言うか…」
「しょうがないなあ!女の子はね、そう言うはっきりしないのが一番嫌いなの!
そんな事だとね、ユカ姉ちゃん、他の人に持って行かれちゃうわよ!」
「えっ!他にも、由香里さんを好きな方がいるんでござんすか?」
里一は、此処で急に慌てたように聞き返した。
「いっぱいいるわよ!ユカ姉ちゃん、とってもモテてるんですからね!」
菜穂は、腕組みすると、ツンと顎を突き上げて言った。
「そいつは、いってえ何処のどなたで…」
「関係ないでしょ!どーせ、里一さんはユカ姉ちゃんの事、何とも思ってないんでしょうからね!」
「いや、それは…」
「とにかく、此処でしっかり男を見せないと、女の子の気持ちなんて、すーぐ変わってしまうんですからね!」
「男を…で、ござんすか?」
里一は、また赤面して鼻の頭を掻き出し…
「そう!男を見せるの!って、言っても、此処で褌を脱ぐとかでなくってよ!」
菜穂がこう言い放つと、里一は益々耳朶まで赤くした。
「まずは、仕事を押し付けるお兄ちゃんやお姉ちゃん達に、きっぱり断る事!
良いわね!でないと、ユカ姉ちゃんと結婚なんて一生できないからね!お返事は!」
「へい…」
「声が小さい!」
「へい!」
昼少し前…
市場からの帰り道、由香里の足取りは重かった。
山のような買い出し荷物を担いだまま、幾つもの道を遠回りして、なかなか社に戻る気になれなかった。
今日も朝から、社の兎神子達は、それぞれの恋人と睦まじくしていた。
菜穂は、希美と二人困り果てた顔する朱理の前で、酔い潰れてる和幸に盛大にバケツの水をぶっかけていた。
政樹と茜は、コソコソ肩を寄せ合い、これから作るお菓子の事で話を弾ませていた。
亜美はしおらしく秀行に肩を抱かれていた。
雪絵は竜也といちゃつきながら摘み食いをしていた。
いつもなら、微笑ましく思える兎神子達の姿も、今は目にすると切なさに涙が溢れ出す。
何より…
里一と顔を合わせるのが辛い。
このまま、何処か遠くに行ってしまいたい…
そう思いながら立ち止まり、大きな溜息をつくと、あの日の光景が、また、脳裏を掠めた。
『里一さん、本当にありがとう。』
外から、赤毛の狐や兎達と遊ぶ子供達の笑い声が響く中…
隠砦の風呂場で、由加里は里一の背中を流しながら、何度も礼を述べた。
『あの子達、ゴンちゃん達が戻って来てくれて、あんなに喜んでるわ。』
『そ…そ…それは、ようござんした…あっしも、嬉しいで、ござんす…』
風呂場に裸で二人きりにされた時から舞い上がっている里一は、声を上擦らせて返事を返した。
『コンコン、かーいーねー、ぴょんぴょん、かーいーねー。』
外からは、また、希美の声に合わせ、愛の赤子のケラケラ笑う声が聞こえてきた。
由香里もクスクス笑いながら、また、里一の背中を流した。
ほっそりとした生白い肌…
それでいて、和幸のように女のような柔肌ではなく、がっしりとした体躯をしていた。
何より、身体中の切り傷が、これまでの荒々しい人生を物語っている。
由香里は、他の白兎達同様、紅兎を名乗る社の黒兎達の裏の顔も知らなければ、里一の修羅の人生も知らない。
ただ…
不具者の生存権を認めない神領において、盲目の彼が社領から社領を渡り歩きながら、今日まで生きる事を認めさせた人生の険しさは想像つく。
由香里は、そんな里一の人生に思いを馳せながら、胸を熱くした。
これからは、自分が彼の人生を支えて、穏やかなものにしてやりたい。
『さあ、今度はこっちを向いて。』
『えっ!あ…いや、あの、その…』
『ほら、早く。こっち向いてくれないと、前を洗えないわ。』
『いや、前はその、自分で洗えるでござんすから…』
『何言ってるの。今日は、里一さんの全身を洗ってあげるわ。だって、あの子達の為に、こんな煤汚れてしまったんですもの。』
言いながら、いよいよ顔を真っ赤に恥ずかしがる里一を自分の方に向け、由香里の鼓動が激しく高鳴った。
十一の時、前宮司神職者や神漏達に寄ってたかって弄ばれて以来、男の身体など腐る程見続けてきた。
男の身体のどの部分がどのようになっているか、細部まで知り尽くし、今更、裸で男と真正面に向き合ったからと言って動揺するものでもなかった。
だが、由香里とは裏腹に、恥じらう乙女の如く顔を真っ赤に身を縮める里一と向き合った時、突然激しく鼓動が高鳴りだした。
恥ずかしさと言うより、愛しさで胸がいっぱいになったのだ。
同時に…
里一には、自分がどう見えているのだろう…
美しいだろうか…
可愛いだろうか…
それとも…
社の兎神子達同様、痩せ狸に見えるのだろうか…
『里一さん…あの、私、綺麗?』
思わず口にした瞬間、由香里はハッとなった。
里一は見えないのだと言う事を思い出したのだ。
幸い、未だ舞い上がってる里一に、由香里の言葉は聞こえていなかった。
『しょうがないな…』
由香里は言いながら、里一に手拭いを持たせて、今度は自分が背中を向けた。
『それじゃあ、私の背中を洗って。』
『あっしが…で、ござんすか?』
『うん。お願い。』
『そ…それじゃあ…』
前にも増して舞い上がる里一の手の温もりが、手拭い超しに伝わってくる。
由香里は、目を瞑った。
見えぬなら、その手で自分の肌の温もりを感じて欲しい…
産まれて初めて愛した男に、自分の身体の隅々まで触れて感じて欲しい…
自分もまた、目ではなく肌で、彼の温もりを感じよう…
互いに洗い洗われて…
最後には肌を重ねて、唇を重ねて、二人で一つになるのだ…
男に抱かれる時の感触なら、十一の歳から嫌と言うほど味合わされてきた。
最初は震えが止まらぬ程恐ろしかった。
死んでしまいたい程恥ずかしかった。
引き裂かれる程痛かった。
締め挙げられる程苦しかった。
回を重ねるうちに、恐怖が消え、羞恥が消え、苦痛が消え、最後は何も感じなくなった。
ただ、醜いものが自分の中をすり抜けてゆく。
何か、醜いものがすり抜ける度に、自分も汚くなってゆく。
事を終えた後、何度も何度も身体を洗った時期もある。
もう自分は穢れた存在なのだと思った時、それすら感じなくなっていた。
ただ、機械的に何かが自分の中を通り抜けてゆく。それだけの事になっていた。
それが、心地よいとか、嬉しいとか、見当もつかなかった。
ところが…
和幸と智子が深い関係に結ばれた時、抱き合う二人の姿を初めて美しいと思う自分に驚いた。
政樹と茜が結ばれた時、可愛いと感じた。
雪絵と竜也が結ばれた時、愛しいと感じた。
智子と別れた和幸が、朱理や菜穂と結ばれた時、幸福を願った。
そして、亜美まで秀行と結ばれた時、初めて自分も男を愛してみたいと思うようになった。
里一と出会ったのは、そんな頃の事であった。
最初は、ただ、盲目なのに料理人顔負けの料理を次々と善に並べる彼に感嘆するばかりであった。
兎神子達が彼の料理の虜になるにつれ、嫉妬するようになった。
親切に手取り足取り調理を教えられ、一つずつ料理を覚えるにつれて、当初は素直に受け入れられなかった彼に少しずつ心を開いていった。
やがて…
後ろから手を握り、包丁の握り方や切り方、研ぎ方を教えてくれる彼の温もりに、尊敬とは違う感情が芽生え出した。
この人に抱かれてみたい…
同時に忘れかけていた羞恥心も芽生え出した。
彼の事を、そんな風に思う自分を恥ずかしく思い、赤面した。
これは、一方的な片想いだと思っていた。
自分何かに、こんな風に思われてる事を知られたら、迷惑がられると思っていた。
彼もまた自分を好きなのだと知った時、鼓動の高鳴りは頂点に達した。
抱かれたい…
あの、包丁の握り方を教えてくれた暖かな手の温もりを全身に感じ取りたい。
しかし、その想いを伝える事はなかなかできなかった。
増して、実力行使で押し倒す何て夢のまた夢であった。
政樹と茜に、囃立てられれば囃立てられるほど、赤面ばかりして、後退りしてしまっていた。
その思いが、漸く叶えられる。
『ねえ、同じところばかり洗ってないで、他のところも洗って。』
由香里は、千切れそうな程、激しく脈打つ鼓動の高鳴りを必死に押さえながら、声を振り絞って言った。
『他のところ…で、ござんすか?』
『そう。他のところ…』
由香里は言いながら、そっと里一の手をとった。
そして、自分でも驚く程、大胆な行動に出た。
その手を、まっすぐ自分の乳房の方に導いたのである。
里一は、金縛りに掛かったように、全身を固まらせた。
由香里は、更に里一の手を乳房に押しつけながら、唇を重ねた。
後は、抱かれるだけだと思った。
里一が、由香里の中に入り、二人で一つになるだけだと思った。
ところが…
『あっ…!』
里一は、一声上げたかと思うや由香里を突き放し、そのまま逃げ出すように、隠砦から飛び出してしまったのである。
どんなに遠回りしても、いずれは、着くべき所に辿りつく。
気づけば、そこは社の前であった。
由香里は、一層重くなる足取りで鳥居を潜り抜けると、今日もまた、山程押し付けられた仕事にてんてこ舞いな里一と境内ですれ違った。
「まあ!また…」
一瞬、声を上げ掛けた由香里は、そのまま押し黙り、俯いた。
里一もまた、由香里の気配に俯いた。
二人の間に、気不味い空気が流れている。
ここに菜穂がいれば…
『何、女の子に山のような荷物担がせてるの!里一さん、男でしょ!ユカ姉ちゃんの荷物、持ってあげなさい!』
と、思い切り里一の背中を押すところなのだろう。
或いは、政樹と茜がいれば…
『よう!お二人さん!』
『アツアツだポニョ!』
『この後は…』
『上から攻めて十回!』
『下から喘いで十回!』
『合計二十回は行けるぜ!』
『更に二十回、合わせて四十回は励むポニョ!』
と、二人が真っ赤になる程、冷やかし囃し立てるのだろう。
竜也と雪絵がいれば…
亜美がいれば…
しかし、その日は昼間から、兎神子達全員に種付参拝がついていた。
そう…
可憐な少女のような面差しに、滑らかな生白い肌、細っそり華奢な体躯の竜也は、かつての和幸に負けず劣らず男色家達の羨望の的であったが…
今日は、筋肉質で精悍な顔立ちをした政樹にまで、種付参拝が立て続けについたのである。
「あの、由香里さん…」
里一の喉の奥まで声がでかかったとき、由香里は唇を噛み締め、目にいっぱい涙を溜めて駆け出していた。
「成る程。お前達、やけに元気ないと思っていたら、そう言う事か。」
「親父さん…」
「お前達の間を取り持とうとして、返って気まずくさせて、アッちゃんとナッちゃんは落ち込んでるわけだ。」
祭祀を一つ終え、本殿を出ながら一部始終を見ていた私が声をかけると、里一は一度あげた顔をまた俯かせて溜息をついた。
「愛ちゃんが、お前達を心配していた。いや、苛々していたと言うべきかな…」
「愛さんが…で、ござんすか?」
「みんな、不器用過ぎて見てられないんだそうな…」
私は言いながら、懐から一枚の切り絵を取り出し、里一に触れさせた。
「これは、希美さんの作ったものでござんすね…花嫁の絵…」
「その隣は?」
「三度笠に引き廻し合羽、口に長楊子…これは…」
里一は言いながら、思わず顔を上げて見えぬ目を私に向けた。
「床上げ祝いの次の日、愛ちゃんはユカちゃんに、さりげなく自分が着ていた花嫁衣装を着せて、希美ちゃんに見せた。その後、いろんな話から、ユカちゃんが料理好きや世話好きな事に話題を持って行き、最期に結婚の話に持って行ったんだよ。
要するに、希美ちゃんの口から、ユカちゃんの結婚式が見たいと言わせる為にな。
その後、マサ君や茜ちゃんの口から、おまえとユカちゃんが想い合う中だって事を希美ちゃんの耳に入れさせて…
早い話が、希美ちゃんの無垢な態度や物言いで、おまえ達に早くくっついて欲しいと言わせようとしてたんだな。それも、いきなり率直に…ではなく、ゆっくりとな。
それを、何と言うのか…マサ君と茜ちゃんが、バカ丸出しに囃し立てるのは前からだが…短気なアッちゃんとせっかちなナッちゃんが、不器用に嗾けるから…」
「そう言う事でござんしたか…」
私の話を聞き終えると、里一は改めて、染み染みと希美の書いた切り絵を撫でまわした。
「それ、おまえに渡して欲しいと、希美ちゃんに頼まれた。あの子は、冗談掛け値無しに、おまえとユカちゃんが結婚するのを楽しみにしてる。それと、愛ちゃんもな。」
「希美さんと、愛さんが…」
「そうだ。もう、殆ど時間が残されてない二人がだ。」
里一は、無言で切り絵を撫で回しながら、また一つ大きな溜息をついた。
「話しは変わるがな。出産を終えて一月以上経ってるのに、愛ちゃんは、未だに思い出したように変な物を食いたがる。今度は、豆大福と羊羹を山程食べたいとか言ってたな…マサ君の目の前で、大声で…」
「えっ?」
「ユカちゃん、今日は一人で市場に出かけて、山のように買い出して来たのに…明日また、市場に行かねばならんだろうな。」
私は、言いながら、愛を真似て片目瞬きをして見せた。
翌日…
「里一さーん、御贄倉のお掃除お願ーい。」
「あっしには関わりねえこって…」
「里一さーん、お手洗いのお掃除お願いだポニョ~。」
「あっしには、関わりねえこって…」
<p style="text-align: left;">里一は、宮司屋敷の庭先を掃除しながら、矢継ぎ早に仕事を押し付けようとする兎神子達を、軒並み断り続けた。</p>
「お母さん、さっきから何ずっと里一さんばかり見てるんだ?」
宮司屋敷の風呂掃除を終えた和幸は、廊下を磨きながら、厳しい目つきで里一を見つめる菜穂に目を留めると、不思議そうに尋ねた。
「何ずっと、見てるんだ?」
和幸の隣では、愛の赤子をおぶる希美が、右手のハタキを適当に振りながら、例によって意味も分からず、首を傾げて和幸を真似て言った。
「まさか、僕より里一さんを好きになったとか…」
和幸が少し不安げに首を傾げると…
「さといっちゃん、好きになったか…」
希美が、また、ハタキを適当にふりながら、和幸と同じ顔して首を傾げた。
「そうかもねー。」
菜穂は、更に厳しい目で里一を見つめながら、上の空で答えた。
「だって、お父さん、お酒全然やめようとしてくれないんだもーん。」
「おいおい、そんな…」
和幸が、忽ち😨←こう言う顔になるのに目もくれず…
「里一さーん、洗濯…」
竜也が言い終えるのも待たず…
「あっしには、関わりねえこって…」
里一がきっぱり断るのを見届けると、菜穂は大きく頷いて立ち上がり、駆け寄って行った。
「里一さん、今日は男を見せたじゃなーい!偉い偉い!」
「そうでござんすか?」
「素敵だったわよ!私、惚れ惚れしたわ!」
菜穂が何度も頷きながら言うと、里一は照れ臭そうに頭を掻き、それを見ている和幸は、益々😨←こう言う顔になった。
「さあ!それじゃあ、今度は、ユカ姉ちゃんの護衛よ!」
「由香里さんの護衛?」
「そう!マサ兄ちゃんったらね、小豆ご飯作る為の小豆、全部餡子にして、豆大福拵えちゃったの!煮物やお浸しつくる筈だったお野菜も、ぜーんぶ、羊羹にしちゃってね!だから、また市場に買い出しに行かなきゃいけなくなったの!」
「何、政樹さん、またやらかしたんでござんすか…」
「そうなの!だから、護衛してあげてね。ほら、ユカ姉ちゃんって、大人しくて、お淑やかでしょう。どんな悪い奴に絡まれるかわかったもんじゃないからね。」
菜穂がニコニコ笑って言う後ろの厨房からは…
「こらーーーー!!!政樹!!!この悪餓鬼!!!!
市場で買い込んだ食材、全部豆大福と羊羹にしやがって!!!!姉ちゃん、また、市場に行かなきゃならないじゃないかーーーー!!!!」
「うわーーーっ!!!ユカ姉!!!勘弁!!!許してーーーーー!!!!ギャーーーーーーーッ!!!」
凄まじい物音と共に、由香里の怒鳴り声と、政樹の叫び声が同時に響いてきた。
「由香里さんが大人しくてお淑やか…成る程でござんすね…」
里一がボソッと言うと…
「お掃除、あとはお父さんが引き受けるから、ユカ姉ちゃんと行ってらっしゃいな。ほら!さあ!さあ!さあ!」
菜穂は、里一の持つ箒を取り上げて和幸に投げ渡すと、里一の背中をぐいぐい押して、厨房へと消えて行った。
「お掃除は、お父さんが引き受けるか…仕事を人に押し付けるな…じゃなかったのかな…」
和幸は、日頃、里一に仕事を全部押し付けるお兄ちゃんお姉ちゃん達を怒鳴りまくる菜穂の剣幕を思い出しながら、投げ渡された箒を見つめて溜息をついた。
すると…
「さといっちゃん、お姉ちゃん、結婚!結婚!お嫁さ。ちゃん、きれーねー。」
希美は、里一の去った方角を見て、満面の笑みを浮かべた。
「お嫁さん、綺麗って…ユカ姉がか?」
和幸が思わず😳←こう言う顔をして聞き返すと…
「うん!お姉ちゃん、お嫁ちゃん、きれー、きれー。」
希美は一層大はしゃぎして言った。
「成る程!ゴンちゃんが、痩せた狸の嫁さん貰ったら、さながら、あー言う似合いの夫婦になるだろう!」
和幸は、思わず吹き出して言うと、腹を抱えて笑い出した。
そこへ…
「誰が、痩せた狸の嫁さんだって?」
口を尖らせ怒ったように膨れつつ、目が笑っている愛が姿を現した。
「やあ、愛ちゃん。」
「今の話し、しっかり、ユカ姉ちゃんに伝えておくからね。」
「わっ!そいつは勘弁してくれ!それこそ、後で僕が狸みたいな顔にされちまう!」
和幸が、思わず😱←こう言う顔をして言うと、愛は今度は本当に声をあげて笑いだした。
「お姉ちゃん、お嫁ちゃん、きれーきれー。」
「そうよねえ。ユカ姉ちゃん、お嫁さんになったら、とっても素敵よね。」
「うん!」
尚もはしゃぎ続ける希美の頭を撫でながら…
「早く、里一さんとユカ姉ちゃんの祝言、見たいよね。それと、お父さんとお母さんのもね。」
愛は、希美と言うより、和幸に聞かせるように言った。
「愛ちゃん…」
「見せてくれる?カズ兄ちゃんと菜穂姉ちゃん、アケ姉ちゃんの祝言…」
和幸は、満面の笑みを向けて尋ねる愛に、返事をする代わりに、空を見上げて大きな溜息を吐いた。