サテュロスの祭典

少女ヌード写真の愛好家です。規制法が緩和され、少女ヌード写真美術復興と新作発表を目指し、果たされた暁には、設定年齢と同年齢の子役起用しての完全ノーカット無修正の実写化目指した小説を執筆します。茶化し冷やかし大歓迎、鋭いツッコミはお手柔らかにお願いします。#少女愛 #少女ヌード #西村理香 #力武靖 #清岡純子

紅兎〜想望編〜溜息(2)

夜更け…
一人書斎で書物を読む私の後ろに、跪く主水が陽炎の如く姿を現した。
「ゴンちゃんを見つけてくれたのは、おまえだね。ありがとう。」
「狐一匹見出すのに手間取るとは…里一の奴もまだまだ未熟…」
主水は軽く舌打ちしながら、面白くもないと言うように呟いた。
「狐一匹って…
おまえが密かに忍び術を仕込んだ動物など…
私何ぞ、百年かけても見出せぬぞ。」
「お戯れを…
十の歳には大頭様の忍び術を悉く会得され、十二の歳には俺の術を悉く見破られた若君が何を…」
「あれは、おまえが手加減しただけの事であろう。私を怪我させぬようにな…
無愛想な顔して、サナちゃんの可愛がっていた動物達を見守り、ゴンちゃんに忍び術を仕込む…おまえは、そう言う男だ…」
私が言うと、主水はまた軽く舌打ちした。
「ところで、今宵は何の用だ?また、軽信が里一かカズ君の周りをウロついているのか?」
「奥方様が、里一と由香里の事を案じておられる。」
「おまえ、そんな事をまで叔母上に報告を?」
主水は無言で軽く平伏した。
「私の事のみならず、社の兎神子達や兎神子達が可愛がっている動物達の事までつぶさに把握する。おかげで四年前の革命騒ぎの件では、皆を救う事が出来たが…
平蔵にしても、おまえにしても、恐ろしい男だな…」
「平蔵…」
主水は、また舌打ちした。
「おいおい、平蔵の名を耳にするだけで、そんな顔するな。」
「彼奴は忍ではない。表立って派手に動き回りやがる。」
「彼奴に言わせれば、おまえの事を、陰でこそこそ動き回るいけすかない男なのだそうだ。真正面から立ち会えば、おまえなど脇差一振り、片腕で軽く倒せるそうな。」
私が軽く笑って言うと、主水はますます眉を顰めた。
「忍が真正面から立ち会ってどうする…」
「まあ、平蔵の事はさておいて…私もあの二人を何とかしてやりたいとは思っているのだが…こればかりはな…」
「奥方様は、里一が早く身を固める事を望んでおられる。」
「私も同じだ。家族ができれば、早々、馬鹿な事に手を出さぬようになるであろう。息吹のようにな。」
「御意…」
「それより、そう言うおまえはどうなのだ?叔母上と身を固める気にはならんのか?」
私が言うと、今度は舌打ちではなく、暫し黙り込んだ後、大きな溜息を一つついて、また、陽炎のように姿を消した。
狐の権と権の連れてきた兎達は、社の兎神子達と遊ぶだけ遊ぶと、山に帰って行った。
思い返せば、束の間の滞在期間であったが、彼らは溢れんばかりの思い出を残して行った。
『次に訪れるのはいつになるだろう…』
夜更け…
和幸は、縁側に腰掛け、一人酒を煽っていた。
月影が、雪に埋もれた庭を照らし、鹿威しの音色が物寂しく胸を打つ。
『もう一度…もう一度だけ、年明け前にやって来てくれないかな…』
和幸は思いながら、庭の隅に植えられた竹の狭間に目を向ける。
二年前…
早苗が最後の出産と死を目前にした時、丁度、あの辺りから、権の家族と兎の家族が姿を現した。
そして、今回も…
権が、朱理に追い出されるように山に帰ってしまった後、希美は二日二晩、部屋に籠って泣き崩れた。
食事の時間になっても部屋を出ようとはしなかった。
御膳を部屋に運んでも、何も手をつけようとせず、泣き続けた。
せっかく元気になってきたのに、このままでは死んでしまうのではないか…
誰もが、そう心配し始めた頃、兎の親子を引き連れた権が、同じ場所から姿を現したのである。
『わあ!コンコンだあ!ぴょんぴょんもいる!』
庭先に、権と兎の親子の姿を見出した時の、溢れんばかりの幼い笑顔が脳裏を過って行く。
『もう一度…もう一度だけ、会わせてやりたい…』
和幸は思いながら、更に酔いもしない酒を呑み干した。
「カズ兄ちゃん、また、お酒呑んでるの?菜穂姉ちゃんに怒られるわよ。」
不意に、声をかけられ振り向くと、赤子を抱く愛が十八番の片目瞬きをしてきた。
「あー、愛ちゃんらー」
和幸は、慌てて赤ら顔を作り、呂律の回らぬ物言いをして見せた。
「しゃーけ、しゃーけ、おいしいにゃ~」
愛は、笑うでも怒るでもなく、真剣な眼差しを向け、ジッと和幸を見つめ続けた。
「ねえ、菜穂姉ちゃん呼んで来ようか?それとも、ユカ姉ちゃんか亜美姉ちゃんが良い?」
愛が言うと、和幸は不意に酒を煽る手を止めた。
似てる…
そう思ったからである。
和幸が大酒を煽り、酔ったふりをし始めたのは、智子の死期が愈々間近に迫って来た頃であった。
酔いつぶれて見せると、百合とシゲ婆が優しくしてくれるのもあったが…
『もう、そのくらいになさい。お父さんには娘がいるのよ。』
智子が優しく嗜めながら、酒瓶を取り上げるのが嬉しかったからであった。
いや、違う。
お父さん…
智子が、和幸をそう呼ぶようになったのも、酒を覚えて酔い潰れて見せるようになった頃からであった。
恐らく…
智子は、娘ができたのだと言う自覚を持たせたかったのであろう。
和幸もまた、そう思わせる事で、幸せになる事を自ら禁じていた智子に、母になったのだと、娘の為に生きるのだと言う気持ちにさせたかったのだ。
しかし…
『お父さん、本当は酔ってないでしょう。』
ある夜、智子は酒瓶を取り上げるなり、そう言って椀に注いでくれたのだ。
『ありがとう。大丈夫、私も美香ちゃんも何処にも行かないからね。ずっと、お父さんの側にいるからね。』
あの時、そう言って和幸をまっすぐに見つめた智子の眼差しに、今の愛の眼差しがよく似ていると思った。
「怒られたいんでしょう?娘がいる父親が、何呑んだくれてるんだって…」
和幸は、何も答えずまた盃の酒を仰いだ。
「怒られると、娘がまだ此処にいるんだって、実感を持てるからね。確かに此処にいるんだって、安心できるからね。
わかるな…
私も、この子が大泣きして手を焼かせてる間、まだ、この子の側にいられるんだって思えるから…」
愛は言いながら、腕の中の赤子を愛しげに見つめた。
赤子は、気持ち良さそうな寝息を立てて眠っている。
やがて、自分を抱く幼い母親のとの別れが訪れる事など、夢にも思ってないようだ。
「崇敬会の顔役達と秋桜会の座衆達に虐められてる爺じを助ける為のつもりだった…
私の事でいつも悲しい思いをさせてるみんなに、少しでも喜ばせる為のつもりだった…
だから、一生懸命、爺じに抱かれてこの子を産んだ…
いざ産まれて、腕に抱いて、乳を飲ませると、こんなに愛しいものだと思わなかった…」
「僕もだよ。」
和幸は、漸く重い口を開いて言った。
「僕も、トモちゃんやナッちゃんを喜ばせたいだけだった…
だのに、今は…」
和幸は、もはや盃に注ぐ事なく、一升瓶を喇叭呑みしながら夜空を見上げた。
そこには、一面、星が散りばめている。
あの星の何処かに、智子がいて、早苗や貴之達がいて…
やがて、希美も…
「トモ姉ちゃん、あの星の何処かで見てるよ。サナ姉ちゃんも、タカ兄ちゃんも…今のカズ兄ちゃんをね。」
「ゴンちゃん、今頃何してるかな…」
和幸は、愛の言葉には答えず、ボソッと言った。
「兎さん達とお別れして、お家でネンネってところかな。この子のように。」
愛は、言いながら、腕の中で眠る赤子の顔を見せた。
和幸は、滲んだような眼差しを赤子に傾けた。
「また、会わせてやりたいな…その子にも、希美ちゃんにも…それと…」
「そうね。ゴンちゃん、大の仲良しになってくれたもんね。
また、こんな可愛いお土産、持ってきてくれると良いね。」
愛が、よく眠る赤子の帯に下がる、松ぼっくりの飾りを小突きながら言うと、和幸は漸く口元を綻ばせた。
「あ、やっと笑ってくれたね。」
「えっ?」
「私、カズ兄ちゃんのその笑顔が好き。だのに、最近余り見せてくれなくなったから。」
和幸が首を傾げると、愛はまた片目瞬きをして見せた。
「ねえ、やっぱり、菜穂姉ちゃんかユカ姉ちゃんを呼んで来ようか?バケツの水掛けられるか、ゲンコツ欲しいんでしょ?それとも、亜美姉ちゃんの薪木が良い?」
「今夜は、どれも望めないだろう。」
「そっか…三人とも、アレだもんね。」
愛が溜息をつくと…
「それじゃあ、三人の代わりに…」
言うなり、唐突に和幸の膝に乗った。
「ねえ、抱っこ。」
和幸は、また口元を綻ばせて、愛を抱きしめた。
「どお?私、重くなったでしょう。」
「ああ、重くなった。大きくなったものね。それに、もう一人産んだから…」
「落とさないよう、しっかり抱っこして。」
「重たいなあ、足が痺れそう。」
「お酒呑んだ罰よ。」
愛は、和幸の腕の中でクスクス笑った後、ふと、口を噤んだ。
「どうしたの?」
和幸が首を傾げると…
「全く…しょうがないわね…」
愛は難しい顔をした。
「すまん…」
「違う…カズ兄ちゃんの事じゃない。」
「じゃあ、誰?」
「お姉ちゃん達。ユカ姉ちゃんと里一さんを何とかくっつけたい気持ちはわかるけどさ…
男はみんな、大胆に迫れば良いってもんじゃないわ。良い人ほど、繊細なの。爺じも里一さんも…それと、カズ兄ちゃんもね。」
「ヒデ、マサ、リュウもだね。図太いのは、タカの奴だけか…」
「だって、タカ兄ちゃんはとっても悪い人だもの。」
「そいつは言えてる。奴は、アッちゃんの言う通り、悪魔、ケダモノ、人で無しだったからね…」
和幸が頬を撫でてやりながら言うと、愛はクスクスと笑った。