サテュロスの祭典

少女ヌード写真の愛好家です。規制法が緩和され、少女ヌード写真美術復興と新作発表を目指し、果たされた暁には、設定年齢と同年齢の子役起用しての完全ノーカット無修正の実写化目指した小説を執筆します。茶化し冷やかし大歓迎、鋭いツッコミはお手柔らかにお願いします。#少女愛 #少女ヌード #西村理香 #力武靖 #清岡純子

紅兎〜想望編〜溜息(1)

雪も深まり、山の動物達は冬眠に入ったのだろうか。
憩い小屋には、誰も訪問者がいなくなった。
彼らが訪れ、また、子供達を喜ばせるのは、雪解けを待たねばならないだろう。
その時には、子供達はまた一段と大きくなり、動物達の何匹かは、新しい家族を連れてやってくるかも知れない。
季節ごとに、同じ時が止まったまま、繰り返し回り流れてくるように思われる山の中でも、確実に新たな時が刻まれなる事を実感させられる瞬間である。
玖玻璃にとって、一番楽しみな瞬間は、命あるものが新たに芽吹き、成長して行く姿を見る事である。
屋敷の子供達、子供達が大事に育てている田畑の作物、庭の木々や草花、共に遊ぶ山の鳥や獣達…
皆が大きく成長するのを見る時、山奥に籠る人生を選んだ自分にも、確かな時が刻まれてる事を実感するのである。
『みんな、また、おいで。子供達が待ってるから…』
玖玻璃が、誰もいない筈の憩い小屋に手を当てて目を瞑ると、別れ際に抱きついてきた、熊の金太郎を思い出した。
熊は、本当に優しい動物だと思う。
決して、相手を怪我させぬよう、間違って爪を立てぬよう、優しく抱きついて来るのである。
金太郎と抱き合った時、抱きつかれると言うより、抱き締められてるような感触がした。
と、その時…
「誰かいるの?」
玖玻璃は、人の気配に、声をかけながら小屋に入ると、結路(ゆじ)が宝物にしてる木彫りの熊を抱きしめて溜息をついていた。
「まあ、どうしたの?こんな所で、風邪引くわよ。」
玖玻璃は、慌てて中に入ると、自分の纏っていた外套で、結路を包んでやった。
「奥方様…」
結路は、玖玻璃の姿を手で探りながら、急にポロポロと涙を零し出した。
「どうしたの?何があったの?」
「私、金時兄ちゃんに嫌われちゃったの…」
「嫌われた?どうして…」
玖玻璃が聞き返すと、結路は答える代わりに声をあげて泣き出した。
ふと、辺りを見回すと、雪で拵えた動物が、たくさん並んでいた。
どれも、金時が作ったものだと一眼でわかる。
幼い時から息吹に仕込まれた金時は、彫刻の名人であった。
憩い小屋に遊びに来る生き物達が、そのまんま雪人形になってしまったような、見事な出来栄えで、今にも動き出しそうだ。
「まあまあ、金時ったら、こんなに…
これ、全部、おまえの為に作ってくれたんでしょう。」
玖玻璃が言うと、結路は泣きながら大きく頷いた。
そう…
金時が彫刻の腕を上げたのは、聾唖で話せない彼が、動物や草花の姿を、見えぬ結路に教えてやる為であった。
そして…
雪人形を拵えたのは、山の動物達が雪で来なくなり、結路が寂しがっていたからなのであろう。
「お前の為に、こんなに雪人形を拵えてくれる金時が、どうして嫌ったりするの。」
すると、結路は目をこすり、しゃくりあげながら、辿々しく話し始めた。
その話によれば…
結路は、金時に幼い思いを一年以上も募らせていた。
どうしたら、この想いを伝えられるか悩んでいた。
言葉で伝えようにも、金時に言葉は聞こえない。
手話や読唇は出来る。しかし、相手が返す手話を結路には見えない。読唇の返事を求めて、金時の唇に手を当てるのは余りに恥ずかし過ぎる。
だったら…
悩みに悩んだ末、千穂に相談した。
千穂はどうやって、息吹に想いを伝えたのか、尋ねてもみた。
すると、千穂は、彼女の為に好きな花の木彫りを彫っている息吹の頬に口づけをしたのだと答えたと言う。
そこで…
結路は勇気を振り絞って、この小屋の作品を作っている最中の金時の頬に口づけをしたのだと言う。
ところが、金時は結路を突き飛ばして去ってしまったのだと言う。
「そうだったの…」
玖玻璃は全て聴き終えると、クスクス笑いだした。
結路は、少しムッとした顔をして、見えぬ目を玖玻璃に向けた。
「ごめん、ごめん。笑ったりしてごめんね。でも、金時は、おまえを嫌ったのではないわ。」
「えっ?」
玖玻璃の言葉に、小首を傾げると結路は…
「千穂さんもよくないわ。ちゃんと全部話さないから…」
後ろから、玖玻璃とは別の声がするのを耳にした。
「智子!そんな格好で出てきては駄目じゃない!」
玖玻璃は振り向き、声の主を見て血相変えて言った。
「大丈夫…私、今夜は調子良いから…」
声の主はそう言うと…
「結路ちゃん、千穂さんはね、大事な事をちゃんと話してないのよ。」
結路の頬を撫で、ニッコリ笑って言った。
「大事な事?」
「そう。千穂さんの話にはね、続きがあるの。
千穂さんに口づけされた息吹さんはね…」
声の主は、小首を傾げる結路の肩を抱いて頬ずりすると、一言一言噛み砕くように話し出した。
「息吹さんったら、物凄く驚いた顔して、千穂さんを突き飛ばして逃げ出したそうなのよ。」
「まあ!」
「それから、千穂さんも今の結路ちゃんみたいに嫌われたと思って、一日中泣いて、物も食べられられなくなったんですって。」
「それで、千穂さんは伊吹さんに嫌われてしまったの?嫌がられてたの?」
「いいえ。何でそんな事されたのか意味がわからなくて驚いたのと、恥ずかしかったのね。
それで、千穂さんが息吹さんの事が大好きなんだって奥方様が教えて差し上げたら、益々恥ずかしがって、本当はとても嬉しいのに、まともに千穂さんと顔を合わせられなくなってしまったんですって。」
「それで、二人はどうなりましたの?どうやって、また仲良しになりましたの?」
「里一が間に入ったのね…」
ここで、玖玻璃は間を割るようにして言った。
「毎日、泣いてばかりいる千穂に、息吹の前で何かと親切にしてやって見せて、息吹にやきもきさせて…<br>
それで、息吹に話して聞かせたのよ。自分もずっと前から千穂の事が好きだったんだってね…」
「えっ!里一さんが、そんな事を?」
「そう…それは、本当の話だったしね。それで、息吹に言ったのよ。おまえは、千穂をどう思ってるのか?好きなのか、好きでないのかって…
もし、好きなんだったら、その気持ちを千穂に伝えてやれ。男だったら、自分の気持ちをはっきりさせろ。そうでないなら、自分が千穂と付き合うぞってね。
それで、息吹、勇気を振り絞って、千穂に好きだって言ったのよ。」
「そうでしたの…」
結路は、呟きながら大きな溜息をついた。
その時…
「おっ!見つけた、見つけた!結路ちゃん、こんなところにいたのか!」
「その声は…平次兄ちゃん?」
結路は、声の方に耳を傾けながら言った。
「平次兄ちゃんじゃないだろう、今日は辰三と一緒に赤ん坊達の世話するんじゃなかったのか?」
「アッ…」
「ほら、早く早く!辰三は昔から刻限にうるさくてな、時刻のタツって呼ばれてるんだ!おまえが来ないって、頭から湯気出してるぞ!」
駆けつけた平次が血相変えて言うと、結路は忽ち顔色を変えた。
辰三がとても厳しい男で、相手が盲目でも聾唖でも、遅刻すると情け容赦なく怒鳴りつける事を知ってるからだ。
既に、平次も散々に怒られてきたのだろう。結路と同じくらい蒼白になっていた。
「大丈夫よ。」
玖玻璃は、二人の慌てる様子をみながら、クスクス笑いだした。
「今日は、花にも赤ちゃんの世話、お願いしてるからね。」
「まあ!花姉ちゃんが?」
「そうか!花ちゃんも来てくれるのか!」
二人は、辰三の恋人、花の名を耳にした途端、ホッと胸を撫で下ろして、満面の笑みとなった。
厳しい辰三と違って、花がとても優しい少女だからである。
きっと、彼女が怖い恋人を宥めてくれるだろう。
さらには…
「あと、早苗もそろそろ来るはずよ。」
玖玻璃が言うと、結路より平次が嬉しそうな顔をした。
「何!早苗さんも来てくださるんですか!」
「まあ…あの子の場合、手伝うと言うより、赤子を見たいだけでしょうけどね。」
「何でも良いや!早苗さんが来てくだされば、辰三の奴、猫を被ったように大人しくなりやがる!」
平次は言うなり…
「それじゃあ、行こうか?」
「うん!」
結路の前にしゃがみこむと、細い背中を差し出した。
「さあ、乗って!」
「良いの?」
「遠慮するな!金太郎の背中ほどでかくねえが、乗り心地は負けないぞ!」
「うん!」
結路が、大きく頷いて背中におぶさると…
「それ!」
平次は声を上げて駆け出して行った。
「わあ!早い早い!平次兄ちゃん、早ーい!」
結路のはしゃぐ声がこだまする。
「あの子達ったら…」
玖玻璃は、智子と顔を見合わせると、またクスクス笑いながら、彼方の方に目をやった。
それは、鱶見社領の方角である。
「里一、どうしてるかしら…
由香里と上手くいってるのかしら…」
玖玻璃が呟くと…
「相変わらずにございます…」
いつの間に現れたのか、後ろで跪く主水が答えて言った。
「そう…
亜美と菜穂の二人で頭を捻って考えついた作戦も、功を成さなかったのね。」
「御意…」
「里一さん….人の恋路を纏めるのは上手いくせに、自分の事となると、てんで駄目なのね…」
「主水、どうにかならないの、あの子達…」
溜息を吐く傍、玖玻璃がそう言うと…
「そればかりは…」
「そう…
人を操るのが上手いおまえでも、恋路はどうにもなりませぬか…」
「人には皆、それぞれの心があります故…」
「そうね。見守る事しか、できないわね。」
「御意…」
主水が軽く一礼して、陽炎のように姿を消すと、玖玻璃はまた、智子と顔を見合わせて溜息をついた。