サテュロスの祭典

少女ヌード写真の愛好家です。規制法が緩和され、少女ヌード写真美術復興と新作発表を目指し、果たされた暁には、設定年齢と同年齢の子役起用しての完全ノーカット無修正の実写化目指した小説を執筆します。茶化し冷やかし大歓迎、鋭いツッコミはお手柔らかにお願いします。#少女愛 #少女ヌード #西村理香 #力武靖 #清岡純子

紅兎〜想望編〜兎幣

宮司屋敷の裏側。
純一郎は、神饌所の前に佇んでいた。
神饌所は、御饌倉、御贄倉、御種倉と呼ばれる三つの建物からなっている。
神領には、年貢や貢租と言った概念はない。
財政は、全て、建前の上では領民達が自発的に納めているとされる、初穂料と玉串料で賄われている。
初穂料とは、年月毎に社の祭神へ捧げられる供物もしくは供物に代わる金品であり、玉串料とは祭祀・祭儀毎に社に捧げられる供物もしくは供物に代わる金品である。
初穂料と玉串料には、三通りある。一つは、職種に応じた収穫物や生産物。一つは、兎神子と呼ばれる幼い子供達。一つは、兎神子を抱いて付ける子種であり、神領では刈穂と呼んでいる。
御饌倉は、収穫物や生産物を納める建物である。また、収穫物や生産物に代えて捧げられる金品も、此処に納められる。
作りは、三階建の無数の部屋に分かれた土蔵である。どの部屋に何を納めるかは社毎に異なるが、金品は最下階、食物は最上階と定められている。保管を目的にすると言うよりは、食となる物を聖とし、金品を賤む思想から、この作りとなっていた。
御贄倉は、兎神子と呼ばれる子供達が日常暮らす建物である。通称、兎小屋とも呼ばれていた。
作りは、一階建の座敷牢である。部屋の出入り口には、障子や襖の代わりに格子が貼られ、土間から中が丸見えの状態となっている。部屋は、押し込めば三十人くらいは入る大部屋一つのみ。兎神子達は、通常、この大部屋で雑魚寝して暮らす事になっていた。
御種倉は、簡単に言えば、種付参拝に訪れた男達と、兎神子達が種付をする場所である。
御贄倉と渡り廊下で繋がっていて、中間点に大浴場がある。
種付参拝者は、御贄倉で種付ける兎神子を選ぶと、まず大浴場に通される。ここで、兎神子と互いに身体を洗い清め合った後、御種倉に通され種付を行う。
作りは、二階建の雅な屋敷のようであり、艶やかな色彩に包まれた無数の部屋が並んでいる。部屋と部屋は、見事な彩色画が施された襖に仕切られている。時にこの襖を開け、幾つか部屋を一つにして、幾人かの参拝者が互いの兎神子を共有して種付を楽しむ事もある。
純一郎は、御贄倉に入ると、土間に立って大部屋を眺め渡した。
鱶見本社では、今はもう、兎神子達は此処で寝泊まりをしていない。かつては、社を警護する神漏達の詰所であった宿房に移されたからだ。
格子も取り除かれ、がら空きになった部屋の中央には、大きな卓が一つ置かれている。
純一郎は、卓の上に、兎神子ごとに色分けされた玉串を五個ずつ綺麗に並べ始めた。
かつては、格子越しに好みの兎神子を物色していたが、今は希望する兎神子の玉串を買って選ぶ事になっている。一日に種付する相手は五人まで。一人の相手する刻限は最長で一刻。以前まで、よく行われていた、一度に二人以上の参拝者で一人の兎神子に種付する事は厳禁。一人の参拝者が選べる兎神子の数は二人まで。二人以上の参拝者が、各自選んだ兎神子を共有するのは構わないが、参拝者全員、共有した兎神子の数分の玉串料を支払った上、種付時間はやはり最長一刻。
純一郎は、自らが定めた規則が、未だ鱶見本社でしか適用されてない事に思いを馳せて溜息を吐いた。
兎神子達の境遇、特に赤兎の存在に胸を痛めている事では、和幸と一致している。
しかし、神領の存在を憎み、兎幣そのものを無くしたい和幸と違い、彼は神領の歴史を誇り、兎幣は守るべき大切な伝統と考えていた。
和幸を初めとする兎神子達に心を寄せるのも、虐げられた子供達への同情と言うよりは、大切な祭祀を行う神子(みこ)達への敬意と愛情からであった。
元来、兎神子達は、神に奉納する神饌と位置付けられている。種付参拝者が、兎神子達との種付によって放たれる子種は初穂とされている。
そもそも、神領において、子種を刈穂と呼ぶのは、女性の体内に宿す御祭神に捧げる穀物に擬えている。
故に、社における参拝者と兎神子達が交わりは神聖な祭祀・祭儀であり、俗に兎の種付と呼ばれているが、正式には、奉種祭と言う。或いは、奉納された兎神子との交わりは、奉納された食物を祭神と共に食する行為と同じとみなされ、神饌共食祭とも呼ばれている。
兎幣と奉種祭の起源には諸説あるが、純一郎が学んだ神民道(じみんとう)の神典五書によれば、遥か国の創始に遡ると言う。
遥か昔。
爺祖大神(やそのおおかみ)は、鰐鮫達を並べて海に道を開き、三諸島の兎達を乙女に変えて本島に渡らせようとしたと言う。
本島の男達と結ばせ、血を残す為である。
しかし、兎達は、海に並ぶ鰐鮫の数を数え、その多さに恐れを成して渡る事を嫌がった。
鰐鮫達はこれを激怒し、それならば何人も海に出さぬと言って嵐を起こし、波を荒くして漁に出る事も、隣の島に渡る事もできなくさせた。
島に暮らす者達が困り果て、途方に暮れていると、一羽の兎が、海を渡る事を嫌がった事を悔い、鰐鮫達の前に進み出て詫びを述べ、償いを申し出た。
鰐鮫達は、これを受け入れると、購いとして皮を剥ぎとり、本島に打ち捨てた。
皮を剥ぎ取られた兎が、痛みにのたうち回っていると、国築神(くずきのかみ)が現れ、薬草を塗り、治療を施したと言う。
すると、皮を剥がれた兎は美しい乙女に姿を変え、そのまま国築神の妻となり、子を産んだ。
子は、和邇雨鱶腹兎彦命(ワニサメフカハラノウサギヒコノミコト)と言い、和邇雨連(ワニサメノムラジ)の祖となり、本島和邇雨一族の棟梁にして、総社の大宮司になった。
これを見て、他の兎達も漸く乙女となって海を渡り、本島の男達と結ばれ、大勢の子供達を産んだ。彼らは、鱶腹部(ふかはらべ)、鱶背部(ふかせべ)、鱶見部(ふかみべ)、鱶獲部(ふかとりべ)、鱶追部(ふかおいべ)、鱶飼部(ふかかいべ)、鱶群部(ふかむれべ)、鱶巣部(ふかすべ)、鱶噛部(ふかがみべ)、鱶頭部(ふかがしらべ)、鱶鰭部(ふかひれべ)、鱶尾部(ふかおべ)と呼ばれる、本島十二部の祖となった。
やがて時が経ち、国築神は中つ国を平定して大国の主となった。
和邇雨一族は、これを祝して祭祀を執り行ない、宴席を設けた。
この宴席には、身分の上下を問わず、本島中の男達が招かれ、社で養われていた少女達のもてなしを受けた。
この時、社で養われていた少女達は、もてなす全ての男達の伽を務め子を成した。
この時できた子供達を、国築神に献上したところ、国築神はとても喜び、子の無い家臣達の家を継がせた。
これが、奉種祭または神饌共食祭の始まりであると言う。
兎神子も、兎神子の家族である兎神家も、兎神子が産んだ仔兎神も、かつては、神聖なる神子として尊び敬われていた。少なくとも、純一郎の学んだ神典には、そう記されていた。
しかし、いつの頃からか、兎神子達は天領における娼婦の如き存在として、卑しめられるようになった。
『全ては、忌まわしい皮剥が行われるようになってからだ…』
純一郎は、御贄倉の土間に突き刺された四本の杭を、訝しげに見つめながら思った。
それは、赤兎を犬のように繋いでおく為の杭。
逃亡を防ぐ為ではない。そもそも、神領内に兎神子達の逃げ場など何処にもない。まして、一糸纏う事も許されず、常に全裸でいる赤兎が、万に一つでも逃亡を図れば、すぐに見出されて捕らわれる。
捕われれば、どんな凄惨な仕置が待っているかは、誰よりも知り尽くす兎神子達が、逃亡など夢にも思うはずがなかった。
繋ぐのは、晒して貶める為であった。
愛がこの杭に繋がれる事は一度もなかった。
しかし、愛以前の赤兎達は皆、外に連れ出される時以外は、常にこの杭に繋がれていた。
繋ぎ方も、単に首を繋ぐのから、二本の鉄杭に両手を繋いで立たせたり、四本の鉄杭に手足を繋いで仰向けに寝かせたりと、日によって色々であった。
他の社では、今もこの杭に幼い少女達が繋がれ、絶え間なく晒し者にされているのであろう。
『古来から伝わる神聖な祭祀…
馬鹿な…
意に従わない領民一族への報復制裁から始まった事ではないか…
そこに、暴利な初穂料と玉串料を毟り取る思惑が重なり…』
その日も、崇敬会の顔役衆は、秋桜会の大商工座衆達を連れ立って、定例会議で同じ事を迫ってきた。
新たな赤兎を置く事と、愛を早く三諸島に送り込む事を…
彼らは、二言目には、神領の伝統を盾にとってものを言うが、本音の部分では、既得権益の確保でしかない。
醜い既得権益欲しさに、幼い少女を嬲りものにする。そうした行為が、神聖なものを神聖でなくさせ、神領そのものを腐敗させている。
『こんなもの!』
純一郎は、怒りに任せて、杭に拳を振り上げた。
その時…
「おやめなさい。権宮司様の拳が痛むだけですよ。」
後ろから、女性とも男性ともつかぬ、細く美しい声が、純一郎の振り上げた拳を止めた。
「和幸君…今夜も眠ってなかったのか。」
和幸は、答える代わりに軽く口元を綻ばせて、鋼鉄製の杭に触れた。
権宮司様に、タカの拳をお見せしたかった。あいつ、美香ちゃんを鎖で繋ぐこいつが憎いと言って、毎日のように殴りつけて、拳を血塗れにしてましたからね。美香ちゃんが泣いて止めなければ、アイツの拳は粉々に砕けてましたよ。」
言いながら、その鉄杭に向ける和幸の眼差しは、相変わらず青白い炎のように爛々とさせていた。
「仮にこんな杭の一本二本へし折ったからと言って…」
言うなり…
懐の鉄扇を開き振り翳すや、鉄杭の一つが真っ二つに斬り倒された。
更に、もう一本鉄扇を懐から取り出して開き、神楽舞を舞いながら、鉄杭の間をスルスルと抜けて行くと、残りの鉄杭全て五枚に切りおろされた。
「さすがは、青い巨星第三にして最強の男、ブルー・スリー…
見事な腕だねー…」
純一郎は、鋭い眼光を向け、閉じた鉄扇の切っ先を首筋に突きつけてくる和幸に、目を細めて言った。
「おっと…この呼び名、君は嫌っていたんだったね。」
「今日こそ、里一さんに渡されたものを、お譲り頂けませんか?」
和幸は、純一郎の言葉には何も答えず、相変わらず鋭い眼光を放ちながら言った。
「渡さねば、私の首も、鉄杭と同じになると…」
「愛ちゃんを、このような目に合わせたいと仰るのなら…」
言いながら、和幸は一冊のアルバムを純一郎に突きつけた。
「百合さんと、百合さんの産んだ子供達だね…」
純一郎は、首筋に突きつけられた、剃刀のような鉄扇の折り目など意にも介さず、アルバムをペラペラめくりながら言った。
そこには、百合の目の前で、十歳にもならぬ混血の女の子達が、全裸で異国人に弄ばれている姿が写し出されていた。
赤兎達のような苦悶の表情はない。皆、遊戯でも楽しむように、異国人の異様に太長いイチモツを扱きしゃぶっていた。
異国人達も、兎神子達をいたぶる神職者達のように、残忍な笑みを浮かべてはいない。むしろ、不気味な程、愛しげな笑みと眼差しを幼子達に向けて、小さな股間を舐めたり、弄り回していた。虐めていると言うよりは、可愛い子供達と優しく遊んでやっている感じであった。
「何だか、楽しそうだねー。」
純一郎は、訝しげに眉を顰めながら言った。
「この子達は、産まれて間もない頃から股間を弄られ舐められて育てられたそうです。
物心つくかつかない頃には、棒飴を使ってイチモツの舐め方を教わりながら、哺乳瓶代わりに占領軍兵士達のモノをしゃぶらされたとか…
それをしたのは…させられたのは…」
「百合さんか…」
和幸は更に青白い眼光を光らせながら、鉄扇を握る手に力を込め、剃刀のような折り目を突きつけられる純一郎の首筋から一筋の血が流れ落ちてきた。
「まだ、子を産める状態で三諸島に送られた百合さんに、占領軍兵士達は殺到したそうです。
十二歳だった百合さんに欲情したのは勿論、百合さんに赤子を産ませる為にです。そうして産まれてきたのが全て女の子と知って、産ませた占領軍兵士達は狂喜したそうす。」
「なるほど…
可愛い愛娘に愛の手解きを施す、優しい父親の図と言うわけか…」
「そう…来る日も来る日も、百合さんの目の前で…
百合さんを弄んできた占領軍兵士達は、百合さんに産ませた子供達を愛情豊かに可愛がるような顔して弄び…
この子達も、優しいおじさん達に遊んで貰っているような感覚で弄ばれ続けてきた。」
「別に悪い事ではあるまい。幼い子頃から、大人達の手で愛の手解きをして、十分成熟したら、身体が求めるままに求める異性を受け入れ合う。
神領の山岳では、古くからどの家庭でもしてき事だよ。
そうして生まれてきた子は、誰の子供とか関係なく、里の子として、皆で育てる。
三諸島では、平地の民も皆そうしてる事を、占領軍兵士達にもやらせてる。悪い事ではあるまいよ。」
「山岳の民がそうするようにするならば…です。
でも、占領軍兵士達は、そうではない。彼らは、そうやって、弄り回してるいるうちに、どうにか指先が入るようになるや…」
「優しいと思っていたおじさん達は、いきなり本性を剥き出しに、のし掛かり、この子らのを参道を血塗れにしたと…」<br>
「来る日も来る日も、百合さんの前で参道を血塗れにされて泣き叫んだ幼子達は皆、百合さんに幼子達を産ませた占領軍兵士達の家に引き取られたそうです。」
「愛ちゃんの明るい未来図と言うわけだな…」
「里一さんから渡されたものをお譲り下さい。」
「核弾頭とやらが欲しい、楽土に加担する為にか?」
「兎神子達皆を…いいえ、和邇雨一族の圧政に苦しむ神領領民全てを解放する為にです。」
「成る程…神領そのものを叩き潰せば、種付も兎幣もなくなるな。」
純一郎がニンマリ笑って言うと、和幸も漸く口元を綻ばせて大きく頷いた。
「出来ぬ相談だな…」
「出来ぬ相談…」
神領を潰し、奉種祭と兎幣をなくすなど、以ての外だ。」
純一郎が表情を消し、冷たく言い放つと、和幸の眼光が再び鋭く光だし、鉄扇を握る手に力が入った。
純一郎の首筋からは、止めどなく血が滴り落ち、格衣と白衣を赤黒く染め出した。
「君は、神領の存在意義も、奉種祭や兎幣も誤解しておるよ。どちらも、民を家族とみなす、この国の相互扶助の精神から来ておるのだよ。」
「兎神家と称される家族から、幼い子供を奪い去り、領民達によってたかって凌辱させ、子を産ませ、その子も奪い去る。それが、民を家族とみなす国の相互扶助だと仰るのですか?」
「子供を奪う、陵辱する…そもそも、それが誤解と言うものだよ。」
掌が切り裂かれ、血が溢れ出るのも構わず、首筋に突きつけられた鉄扇を握りしめると、今度は純一郎が、鋭い眼光を放って和幸を見据えた。
「いつの時代にも、貧困は存在した。一握りの粟や稗すら初穂に納められないほど困窮してる者達がいた。
それでも、人が人の営みを続ければごく自然に子供が生まれ、子供が産まれれば、食い物がなくとも口だけは増える。
彼等は、生きる為に断腸の思いで産まれた我が子を殺そうとした。
その殺されようとした子供達を引き取り、社で養い育てたのが、兎幣の始まりだよ。」
「そうして、引き取った子を、領民達で寄ってたかって陵辱し、産まれた子達を陰謀の道具にした!」
「違う!そこが、一番の誤解なんだよ!
社で引き取った子達を養うにも、食い物がいる!その食い物は、領民達皆で出し合った!子供の家族の食い物もだ!
だが、ただでそれをすれば、出す方には、子供にも、子供の家族にも、ただで食わせてる、食わせてやってると言う蔑みが生まれる!その蔑みは、困窮に伴い、彼等のせいで困窮してると言う憎しみに変わる!
子供と子供の家族に、養われるだけの意味が必要だった!その為に始められたのが奉種祭だった!
奉種祭で授かった子供達も、陰謀の道具にされたんじゃない!子の無い王族達に授けられたのだ!
父無し子を養えるわけのない兎神子や兎神家の者達と、家系断絶の危機に立たされていた王族達と、双方を救う為にだ!
王族の家を継いだ兎神子の子供達同士は、兄弟姉妹として結束し、国の安泰に努めた。
やがて、国に大乱が起きると、兎神子の子達はその終結を目指した。兎神子の子達は合議に合議を重ね、時の大国主の認可を得て、隣国の大王に国譲りする事で、漸く大乱を終結させて、平和の世を築いた。
一握りの穀物を納める事が出来ぬほどに貧しく、子を殺さねば生きて行けぬ者は、殺さねばならぬ子を、初穂として納めれば良い。その子達は、兎神子として大切に養われた。その子の家族達も、全ての初穂料と玉串料を免除された上、兎神家の者として領民達皆で養われた。
兎神子達が御種を受けて授かった子供達は、仔兎神と呼ばれ、子無き国の支柱となる家系に授けられ、断絶から守り続けてきた。
奉種祭も兎幣も、この国を支え、貧者を救済する尊い祭祀なのだよ。」
「七つかそこらの子を全裸にして、寄ってたかって陵辱する事もですか?」
「違う!
赤兎の兎幣は、三諸島の理不尽な要求に始まった。
元々、三諸島の口減らしと血縁を結ぶ事で、新たに植民し始めた本島支配強化を狙って、兎と呼ばれる少女達を送り込み、現地の男達に嫁がせた。
ところが、偶然天領から渡ってきた国築神に兎の一人が見初められた事と、仔兎神の献上が縁で顕中国と強く結びついた事から、本島は飛躍的に発展した。
気づけば、母体である三諸島より豊かになっていた。
本来、三諸島からは、兎渡島(とわたりしま)と呼ばれていたこの島は、気づけば、顕中国から本島とみなされ、そう呼ばれるようになった。
三諸島は、これを非常に不快に思ったのと、三諸島こそ神領の母体である事を、顕中国に見せつける為に、一つの要求を突きつけた。」
「青兎の献上…」
「早い話が、人身御供だ。本島諸社領から、一人ずつ、十二歳の少女を差し出すよう要求した。一つには、三諸島の女達が子を産まなくなったのに対し、本島の女達が多産なのを見て、三諸島の子を産ませようと言う目論見もあってな。」
「でも、最初の青兎は一人も子を産まず、十五にもならずに死んでしまった。」
「当たり前だ。青兎達は、たどり着いた途端、着物を剥ぎ取るや、以後、布切れ一枚身に纏う事を禁じて、来る日も来る日もよってたかって嬲り物にされた。
皆、あっと言う間に御祭神を破裂させて、悶え死んだそうだ。
これを見て激怒した三諸島は、更なる要求を突きつけた。
社領毎に七つの少女を赤兎として選び、十二までに子を産ませてから、献上しろと…」
「その結果、本島でも三諸島を真似て、七つのを子を…」
「それも違う!
青兎の献上を拒む事は、どうしても許されなかった。
顕中国は、かねてより三諸島の搾取を知り、軍を差し向けてくれると言っていた。
だが、同じ頃、三諸島は大陸楽土の王朝に朝貢し、金印を授かっていた。
もし、顕中国が三諸島を攻撃すれば、楽土の王朝に敵対した事にされる。そうなれば、今度は、楽土の軍勢が、顕中国を攻撃する事になる。
本島は、従わざるを得なかった。
だから、せめて、青兎として献上された後の非道に少しでも耐えられるよう、赤兎となった時点から、慣れさせるようにした。
まず、社領の罪を禊ぐ儀式として着物を剥ぎ、清き無垢な姿を晒して過ごす、特に神聖な神子として祭る事から始めた。
その上で、早いうちから種付にならせるよう、皆で赤兎に種付をするようにした。決して傷付けぬよう、苦痛を与えぬよう配慮しながら、あくまでも、これも領民一人一人の罪を禊ぐ儀式として行い、慣れさせようとした。
そうして、十二までに子を成した赤兎には、どうせ三諸島では死ぬまで着物を着る事を許されぬと知りつつ、最後に社領で最も高価な青い着物を着せて、盛大に祀って、送り出した。」
「それは、僕も伝承で読んだから知ってます。でも、現実には、三諸島における青兎の扱いも、本島における赤兎の扱いも、何ら変わりはありません。
所詮、やっている事は、三諸島も本島も同じです。ならば…」
南北朝時代からだよ…」
南北朝時代…」
「そう。赤兎が、罪を禊ぐ神聖な存在から、罪に塗れた穢れた存在とみなされるようになったのは、天領における南北朝時代からだ。
本来、この支柱となる家系に子供を授けるのは、その家系の断絶を防ぐのと、仔兎神同士を結束させて、戦乱を防ぐ為だった。
それが、次第に家系を継いだ仔兎神を通じて、和邇雨一族が裏の権力を握り始めて変わり始めた。逆に戦乱を引き起こし、多くの家系を断絶の危機に陥れ、その家を乗っ取る事で、この国そのものの乗っ取りを企てるようになった。
その流れで引き起こされたのが、南北朝の動乱だった。
これに、ある兎神家の者達が異議を唱えた。仔兎神同士を殺し合わせ、権力を握ろうとする企てを、真っ向から批判した。
和邇雨一族は、異議を唱えた者達を徹底的に処断し、報復制裁として、その者達の幼い娘達を全裸にして領民達に凌辱させた。
以来、和邇雨一族に歯向かう者が現れると、その一族は兎神家に落とされ、一番幼い娘が、皮剥を受けて赤兎にされるようになった。
同時に、兎神家は犯罪者の一族とみなされるようになり、兎神子達は、娼婦の如き存在と見做されるようになった。
南北朝の時代まで…
奉種祭も兎幣も、神聖な祭祀だったし、兎神子達は尊い神子だったのだよ。」
「なるほど…本来ならば、兎神子達は社領中で大切に養われながら、尊い祭祀として抱かれていた。」
「そう言う事だ。」
「まるで…占領軍兵士達に玩具にされる百合さんの子供達のようですね。」
和幸は、純一郎の話を聞き終えると、また、一冊のアルバムを突きつけながら、吐き捨てるように言った。
「黒兎達は、白兎達が幼いうちから男達に肌を晒す事、抱かれる事に慣れさせる為に飼われ始めたとか…
愛情もって養われ、種付に慣れさせ、時が来れば寄ってたかって弄ぶ。神領がしてきた事は、占領軍兵士達のしてる事と全く同じだ!」
そのアルバムには、全裸にされた幼い男の子達が、異国の男達に何やら指示されながら、全裸の幼い女の子達と絡みあっていた。
「占領軍兵士達は、百合さんのような青兎達に男の子が産まれると、女の子達と種付をさせるそうです。
黒兎達に白兎達と種付をさせるのと全く同じ目的で!
しかも、男色家の米兵達は、この幼い男の子達を玩具にするところまで、兎飼いとそっくり同じです!」
「違う!断じて違う!」
純一郎は、突きつけられたアルバムを投げ捨て、踏みにじりながら叫んだ。
「奉種祭や兎幣は、こいつらのように歪んだ情欲を満たす為のものではない!断じてない!貧困領民の子供達と、子無き国の支柱家系を断絶から守る為のものだ!」
「占領軍兵士達は、百合さんの目の前で、百合さんの子供達を散々玩具にして見せたあと、引き取る時にこう言っていたそうですよ。国に連れ帰ったら、親類や友人達にもたっぷり抱かせて、産まれてきた子供達は、子供に恵まれない家に恵んでやるのだのね。」
「何だと?」
「これは、もう又聞きの又聞きでしかありませんが…
この兵士達、帰国後には私設孤児院を設立したそうです。目的は、孤児達に種付を教えて、後援者達に抱かせる事と、抱かせて産まれた子供達を、望む家に売り付ける事。
それで、孤児院の一番幼い女の子は、施設内では常に全裸でいる事を強要されてるそうです。
罪人の子を赤兎にした事で、兎神子や神饌共食祭のありようが変わったのではない!そもそも、兎幣や神饌共食祭などと言う悪しき因習が、今の赤兎の境遇を生んだ!
違いますか!」
和幸は叫ぶなり、純一郎の首筋に突きつけていた鉄扇を振り上げ拡げた。
「和幸君、それで私を斬ると言うのかね?」
純一郎は、大きく溜息をつくと、面白くもなさそうに振り上げられた鉄扇を見上げた。
「もう一度、お願いします。里一さんがお渡ししたものをお譲り下さい。
歪んだ風習は、祭祀でもなければ伝統もない!悪しき因習です!悪しき因習も、その因習に支えられてる神領も、この世から無くすべきです!」
「歪んだ因習ね…」
純一郎は言いながら、一冊の名簿を和幸に手渡した。
「これは?」
「爺じと私に、次の赤兎の兎幣と愛ちゃんを三諸島に引き渡す事を迫ってる崇敬会の顔役達と秋桜会の座衆達の名簿だよ。
爺じは、何とか赤兎兎幣の廃止と愛ちゃんを白兎として社に留め置く事の同意を求めてるがね…
まあ、無理だろう。」
和幸は、純一郎の話を聞きながら名簿に目を通すと、次第に目つきを変えていった。
「里一君にも言っとるのだがね、こいつらを殺そうとか言うのはやめてくれよ。」
純一郎が言うと、和幸は凍りついたような眼差しを向けた。
「まあ、見ていてくれ。こいつらは…
いや、赤兎を飼う事で、既得権益を貪ろうとしてる神領中の連中は、生きながらに排除抹殺してやる。一人残らずな。
その上で…
兎神子と兎神家の処遇、奉種祭や兎幣の在り方を、あるべき姿に戻す。勿論、赤兎の皮剥や兎幣もなくせば、愛ちゃんを三諸島に送りもしない。
その上で、決めてくれんかな?
そう…
軽信と革命とやらを起こすかどうかをな。」
和幸は、答える代わりに大きく溜息を一つつくと、拡げた鉄扇を閉じて懐にしまった。
「ありがとう、和幸君。」
純一郎は、元々細い目を一層細くして満面の笑みを浮かべると、大きく頷いた。
「それとな、和幸君…」
和幸が無言で踵を返して立ち去りかけると、純一郎は今一度呼び止めた。
「爺じにも同じ事を言ったのだがね…
死に急ぎするなよ。
君がどんな人生を生きようと構わんさ…でも、何て言うかな…とにかく、生きろ。」
「何の為にですか?」
和幸は、後ろを向いたまま立ち止まり…
「美香ちゃんが逝き、平次達が逝き、サナちゃんとタカが逝き、トモちゃんも逝きました。
もうすぐ、希美ちゃんも逝きます。
その上、愛ちゃんまで、百合さんと同じ運命を辿るのなら、生きる事にどんな意味があると言うのですか?」
それだけ言うと、白々と明けようとする空の下、宮司屋敷に向かい去って行った。