2020-11-24から1日間の記事一覧
赤子を揺り籠に寝かせると、愛はゆっくりと帯を解き始めた。私は、愛の着物を脱ぎ、髪を解く手伝いをしながら、朱理を呼びに行きたくなった。白無垢の着付けに、文金高島田の髪を結うのも難しければ、いざ脱がせ、髪を解くのも至難の技なのであった。「イッ…
「ここが、私達、裸の兄弟姉妹の隠砦よ。」愛は、参籠所の前に立つと、胸に抱く赤子に言った。扉を開けると、そこは仕切無しに寝室と浴室に別れた、大部屋が広がっていた。寝室には、都合十台の寝台が並べられ、うち四台は分娩台を象っており、四隅には手足…
「里一君、こんな夜中に呼び出して、いったいどんな素晴らしいネタをくれると言うんだね。」夕餉の賑わいが嘘のように静まり返った食堂に、一人椅子に腰掛ける里一を見出すと、純一郎は皮肉な笑みを浮かべて言った。「私はねえ、眠たいのだよ。今日は一日、…
和幸は、青霧島を刀掛けに置くと、また、菜穂と希美の寝顔を見つめた。既に酔いは冷めている…いや、厳密には、最初から酔ってなどいなかったのだ。『頂きます、言えたよ…』『ハーシ、ハーシ、美味しいね…』『我慢、我慢、お利口ね…』『天麩羅貰った、天麩羅…